3歳の子です。半年ほど前に手足の甲を中心に小さい発疹が出て、2週間ほどで消失しました。その際、皮膚科の医師にジアノッティ症候群ではないかと言われたのですが、最近、保育園でB型肝炎が集団感染することもあると知り、関連があるのではと心配になりました。発疹が出たときはとくに病院で血液検査などを受けませんでしたが、ジアノッティ病に伴う発疹だったらと心配になりました。いまからでも血液検査をして確認すべきでしょうか?また、保育園での集団発生などの可能性があるならB型肝炎のワクチンをしたほうがよいでしょうか。
まず、ジアノッティ病とジアノッティ症候群について説明しましょう。
ジアノッティ病とはB型肝炎ウイルス(HBV)への感染によって手足や顔に赤い小さな膨らみのある発疹(これを丘疹といいます)が出る病気で、主に乳幼児に発症します。同様の丘疹はHBV以外にEBウイルス、サイトメガロウイルス、コクサッキーウイルス、マイコプラズマなどさまざまなウイルス感染でも起こることから、こうしたウイルス感染に伴う発疹を「ジアノッティ症候群」と呼んでいます。
いずれの場合も、発疹が治まれば病気は治癒したと考えられます。
次に、ウイルス感染によって起こる肝炎(ウイルス性肝炎)について述べますと、これには大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは水や食べ物などによる経口感染で広がる以前は「流行性肝炎」と呼ばれていた疾患で、代表的なものがA型肝炎です。もうひとつは血液など体液を介して感染する「血清肝炎」で、主なものがB型肝炎とC型肝炎です。
B型とC型では、ウイルスをもっているが症状がない「キャリア」と呼ばれる人がいます。本来、私たちのからだはウイルスや細菌などの異物(これを抗原といいます)が侵入すると免疫システムが「抗体」をつくって排除するのですが、たとえば免疫力が未熟な小さな赤ちゃんがB型肝炎ウイルス(HBs抗原)に感染すると、対抗する抗体(HBs抗体)をつくることができず、体内にウイルスが住みついてしまいます。これが「キャリア」ですが、症状がないことが多く、検査でHBs抗原の有無を調べないと本人も感染に気づきません。C型肝炎は乳幼児でなくても「キャリア」や「持続感染」になります。
また、B型肝炎ウイルスは感染力が強く血液だけでなく唾液や尿などにも混じって排出されるため、傷口や粘膜から感染することがあります。それで保育所などで集団感染する可能性があるのです。
さて、ご相談の場合ですが、半年前に丘疹が出て皮膚科の医師にジアノッティ症候群ではないかと言われたとのこと。HBVとの関連を心配しておられますが、丘疹などが出て治癒したということは免疫システムが働いてウイルスと闘ったということ。たとえジアノッティ病だったとしても、すでにHBs抗体ができている可能性があるのではないかと考えます。しかし、慢性肝炎やキャリアに移行する可能性もゼロではないので、血液検査でHBs抗原とHBs抗体の有無を調べておくといいでしょう。
万一、HBs抗原が検出されれば経過観察の必要があります。しかし、HBs抗体があればウイルスに感染した後に免疫ができたということで、今後HBVに再度感染することはまずないので予防接種を受ける必要はありません。
抗原も抗体も検出されなければHBVの感染ではなかったということ。いまの日本の医療環境や衛生状態でHBVに感染する機会はめったにないのですが、今後はさらに海外との交流が活発になるでしょう。この予防接種は海外では広く子どもにも行われており、深刻な副作用の報告もありません。機会があれば、ぜひ接種することをお勧めします。